「防犯ブザーは持ったか?スマホも充電してあるか?」
「ラピッツ…別に俺一人で行動するワケじゃないんだから。そもそも防犯ブザーなんて要らないだろう」「備えあれば憂いなしなんだよ!!」
「…まったく」
「ホレ、時間が勿体ねーからそろそろ行ってこい。ラピッツはこっちで押さえておく」
「いってらっしゃい、アルト、バノッサ」
「兄貴も気を付けろよ」「そんなに遠出をするワケじゃないんだが…行ってくる」
「…それにしても、何も全員で見送る事もなかっただろうに」
「休みで暇を持て余しているんだろう、向こうで土産でも見ていってやるか」
「そうだな」「はー、ようやく行ったか」
「おでかけ、いいな…」
「なんだ、お前もどこか行きたい所があるのか?」「…海、見てみたい」
「ふーん、それなら今度連れて行ってやろうか?」
「ほんと?」
「ああ、他にも行きたい所を探しておけよ。海だけなんてつまんねープランにはしねーからさ」
「…うん!」「ところで、海についてはどこまで知ってるんだ?」
「海、池より大きい!いっぱい、たくさん」
「おー、大体合ってるわ」「………はぁ」
「どうした?」
「いや…何か娘を嫁に出す父親の心境というか」
「嫁も居なけりゃ娘も居ないだろ…」
「例え話だっての!」「…長い事アイツの保護者を自負してきたせいか、こうやって構うのももう止めなきゃいけねーんだろうけど…寂しいんだよ」
「…別に止めなくても良くね?」
「は?」
「本人が大丈夫って言うまではそのままで居てやれよ、急にお前の態度が変わったらバノッサも戸惑うし寂しがるだろ」
「…そーかぁ?」
「お前、バノッサにああいうの止めろって言われた事あるか?」
「無いな」
「バノッサはちゃんと分かってるんだよ、お前が自分のためにしてくれてるんだってな。アイツがそういう性格なのはお前が一番分かってるんだろ?」
「…!」「…ぐすっ……バージンロード、一緒に歩きてぇ」
「……それだけは止めてやれ」
イイハナシダッタノニナー。
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