秋のお出掛け 茶番 前編

2021年7月10日土曜日

新メイン世帯 茶番




朝8時、メルティニオス動物病院前。
「防犯ブザーは持ったか?スマホも充電してあるか?」
「ラピッツ…別に俺一人で行動するワケじゃないんだから。そもそも防犯ブザーなんて要らないだろう」
「備えあれば憂いなしなんだよ!!」
「…まったく」
「ホレ、時間が勿体ねーからそろそろ行ってこい。ラピッツはこっちで押さえておく」
「いってらっしゃい、アルト、バノッサ」
「兄貴も気を付けろよ」
「そんなに遠出をするワケじゃないんだが…行ってくる」
「…それにしても、何も全員で見送る事もなかっただろうに」
「休みで暇を持て余しているんだろう、向こうで土産でも見ていってやるか」
「そうだな」


「はー、ようやく行ったか」
おでかけ、いいな…」
「なんだ、お前もどこか行きたい所があるのか?」
「…海、見てみたい」
「ふーん、それなら今度連れて行ってやろうか?」
「ほんと?」
「ああ、他にも行きたい所を探しておけよ。海だけなんてつまんねープランにはしねーからさ」
「…うん!」
「ところで、海についてはどこまで知ってるんだ?」
海、池より大きい!いっぱい、たくさん
「おー、大体合ってるわ」


「………はぁ」
「どうした?」
「いや…何か娘を嫁に出す父親の心境というか」
「嫁も居なけりゃ娘も居ないだろ…」
「例え話だっての!」
「…長い事アイツの保護者を自負してきたせいか、こうやって構うのももう止めなきゃいけねーんだろうけど…寂しいんだよ」
「…別に止めなくても良くね?」
「は?」
「本人が大丈夫って言うまではそのままで居てやれよ、急にお前の態度が変わったらバノッサも戸惑うし寂しがるだろ」
「…そーかぁ?」
「お前、バノッサにああいうの止めろって言われた事あるか?」
「無いな」
「バノッサはちゃんと分かってるんだよ、お前が自分のためにしてくれてるんだってな。アイツがそういう性格なのはお前が一番分かってるんだろ?」
「…!」
「…ぐすっ……バージンロード、一緒に歩きてぇ」
「……それだけは止めてやれ」







イイハナシダッタノニナー。

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